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ダンジョンのある世界で生きる  作者: 竜太郎


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405/451

第405話「美月の沈黙」

夜。

避難区画の広場。


焚き火の炎が、人々の顔を赤く照らしていた。


美月は、空になった大きな鍋を布で拭いていた。

今日の配給も、大きな混乱なく終わった。

世界が静止しているおかげで、人々の心には薄い安堵が広がっている。


「美月さん、悠真さんたちは今日も地下ですか?」

一人の母親が、子供を抱きかかえながら聞いた。


「ええ」

美月は手を止めずに答えた。

「でも、心配いりませんよ。あの人は、いつも通り帰ってきますから」


「世界は、本当にこのまま平気なのかしら」


美月は答えなかった。

平気か、と聞かれれば、平気ではない。

世界病は治っておらず、白影は今日も空に浮かんでいる。


だが、美月はその恐怖を言葉にして広げるようなことはしなかった。

沈黙を怖がらない。

それが彼女の、この過酷な世界での在り方だった。


「明日も、温かいスープを作りますね」

美月は静かに微笑んだ。


大きな演説も、世界を救う約束もない。

ただ、明日もこの場所で人が生きるという事実を、彼女は自分の沈黙の中にそっと繋ぎ止めていた。

焚き火の爆ぜる音が、夜の空気に静かに消えていった。

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