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第404話「断面の小波」
夕方。
観測班の部屋。
プリンターの出力紙が、微かに波打ちながら吐き出されていた。
「小波が発生しています」
担当者が画面のグラフを指さした。
「大きな上昇ではありません。ですが、群馬の地下での接触に合わせて、全国の観測所の基礎値が数パーセントだけ上下に振動しています」
世界断面のルールにある、二日ごとの標準的な動き。
隔離装置が、悠真の入力を受け入れて、システム全体の圧力を再調整している証拠だった。
白峰蓮が地下から戻り、自分の記録紙を机に置いた。
「問題ない。想定内の圧力分配だ」
「東京や九州でも、この小波は観測されているはずですね」
「ああ」
蓮は自分のノートを開いた。
「彼らはこれを、新しい攻撃の予兆だと誤認するだろう。そして、無駄な防衛線を敷く。世界が勝手に動くことに恐怖しているからだ」
人間は、分からないものに名前をつけ、敵と見なすことでしか安心できない。
だが、この紙の上に刻まれているのは、ただの現象の推移だ。
解決を急がず、崩壊を遅らせる。
その生活維持の思想が、蓮の書く数字の一一に完璧に溶け込んでいた。
「記録を継続しろ」
蓮の静かな指示が、部屋の中に響いた。




