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第400話「四百話の断面」
昼。
拠点地下、第一中継所。
古いコンクリートの壁に、白峰蓮は新しく「四百」の数字を書き入れた。
この三か月間で積み上げてきた調査の回数、そして彼らが歩んできた道のりの長さ。
それが、一本のチョークの線となって地下の闇に固定される。
物語が四百話に到達しても、世界が劇的に加速することはない。
「反応、依然として安定」
蓮は計器の針を見つめながら言った。
「東京の連中、まだ騒いでるのか」
蓮斗が壁に背を預けながら聞く。
「データ上は、彼らの管区でも静止状態が維持されている」
蓮は淡々とペンを動かした。
「だが、彼らはその理由を群馬の異常値に求めている。自分たちの支配力が及ばない場所で世界がコントロールされている事実が、彼らには耐えられないのだろう」
悠真は暗闇の奥を見据えていた。
東京の思惑も、九州の動向も、この地下数百メートルの静寂には届かない。
ここにあるのは、ただ人類の絶望を吸い上げて磨耗し続ける、隔離装置の巨大な質量だけだ。
「これより深部へ入る」
悠真が歩き出す。
四人の足音が、レールの隙間に吸い込まれていく。
英雄の物語ではない。
ただ、世界が壊れないように見守る側の記録が、ここからさらに深く、静かに紡がれていく。




