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第399話「七月の朝」
朝。
神城家の居間。
カレンダーの頁が、一枚新しくめくられていた。
七月一日。
窓から差し込む光は、六月の終わりよりも少しだけ鋭さを増している。
だが、拠点の外を包む空気の冷たさは、侵食災害の初期と何一つ変わっていなかった。
悠真は縁側に腰掛け、新しい無線機の基盤に触れていた。
指先から伝わる金属の感触は、地下の壁に置いてきた古い端末と同じものだ。
「悠真、準備はできてる」
蓮斗が中庭から声をかけてきた。
その背後には、すでに防寒具を身にまとった玲奈と蓮の姿もあった。
誰一人として、これから始まることへの不安を口にしない。
ただ、次の仕事を始めるための乾いた沈黙だけが、彼らの間にあった。
「行くか」
悠真は立ち上がり、ポケットに無線機を収めた。
ぴーちゃんがいつものように、悠真の肩へと器用に飛び乗る。
小さな爪が布地を掴む感触が、悠真の意識を現実へと繋ぎ止める。
世界は救われない。
その冷酷な前提を胸に秘めたまま、彼らは再び、日常を維持するための降下を始めようとしていた。
古い時計の音が、新しい一か月の始まりを告げるように、家の中に響き渡っていた。




