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ダンジョンのある世界で生きる  作者: 竜太郎


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398/451

第398話「六月三十日の終わりに」

夜。

拠点の外壁の上。


六月最後の夜が、静かに更けようとしていた。


見張り班の交代の足音が、コンクリートの床に規則正しく響く。

「異常なし」

「ああ、異常なしだ」

昨日と同じ言葉が、今日も世界の維持を証明していた。


白峰蓮の研究室では、ノートの最後の行に日付が書き込まれていた。

【六月三十日・深部反応の安定を継続。世界各管区において白影の静止を確認】


物語はまだ三百九十八話。

全体の半分を過ぎ、大長編の構造は着実に積み上げられている。

メタ視点も作者視点もなく、ただ客観的な事実だけがこの一冊のノートに固定されていく。


世界は救われなかった。

だが、神城悠真とその仲間たちが守った日常は、今日もこの拠点の隅々で息をしていた。

美月の計算した食料があり、蓮斗の研いだナイフがあり、恒一の支えた柱がある。


悠真は自室の窓から、遠くの白影を見つめていた。

それはもう、恐怖の対象ではなく、世界を維持するための古い装置の姿だった。


明日から七月が始まる。

新しい季節が来ても、彼らのやるべきことは変わらない。

ただ、世界が壊れないように見守り続ける。

その果てしなき生活維持の記録が、夜の静寂の中に深く、静かに溶けていった。

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