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第397話「悠真の意思」
朝。
神城家の縁側。
悠真は、ポケットから昨夜の古い無線機を取り出した。
地下の壁に残してきたはずのそれと、全く同じ型の予備。
金属の冷たさが、朝の光に照らされて微かに光っていた。
次に行くときは、これを持っていく。
「悠真、また行くの?」
ぴーちゃんが、悠真の足元から見上げて聞いた。
「ああ」
悠真はぴーちゃんを抱き上げた。
「次は、もっと深くへ行く。ただ触れるだけじゃなくて、俺たちの意思を完全に装置に馴染ませるんだ」
「ぴーちゃんも行く」
「分かってる」
悠真はぴーちゃんの頭を撫でた。
「お前がいないと、向こうの『疲れ』が分からないからな」
世界規模での戦争もなければ、大演説もない。
王になることも、支配者になることも拒否した青年は、ただこの小さな家族と拠点の日常を守るために、再び地下へ降りる決意を固めていた。
侵食災害は消えない。
魔王も消えない。
だが、維持することはできる。
そのシンプルな真実が、悠真の体の中に重く、静かに沈み込んでいた。
「出発の準備をしよう」
悠真が立ち上がると、古い時計が朝の八時を告げた。




