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第394話「北海道の地下列車」
深夜。
蒼月残存区域、地下深くの古い線路。
観測型の地下列車が、低い音を立ててゆっくりと走っていた。
窓の外には、暗闇の向こうに露出した隔離装置の基部が、青い光の帯となって通り過ぎていく。
北海道編において、この列車は世界異常を観測するための唯一の足だった。
蒼月レインは、列車の最前部で計器の数字を見つめていた。
変化はない。
群馬での接触による影響は、この北の最果てでも完璧に機能していた。
「夜前鐘の音が、しばらく鳴っていませんね」
運転士が前を見据えたまま言った。
「深部が呼吸を整えたからでしょう」
蒼月は静かに答えた。
「悠真たちが地下でやったことは、世界全体の肺に空気を送り込むようなものです」
しかし、それが一時的な措置であることも、蒼月は理解していた。
生活維持を積み上げる。
それが北海道編の絶対ルールだった。
列車が走ることで、かろうじて世界の一部が固定される。
「速度を維持してください」
蒼月が指示を出す。
「急ぐ必要はありません。だが、止まってはいけない」
暗いトンネルの奥へ、列車のライトが白い光を伸ばしていった。
世界はまだ壊れない。その記録が、車輪の音とともに刻まれていた。




