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第393話「九州の夜前」
深夜。
九州、黒崎勢力の沿岸監視所。
波の音が、暗闇の中に規則正しく響いていた。
海面に浮かぶ白影は、月光を浴びて青白く輝いている。
それは地域侵食のステップで凍りついたまま、波に洗われ続けていた。
指揮官は、火の消えかけた暖炉の前で、群馬の本家から届いた古い手紙を読み返していた。
【最後まで人間側にとどまれ】
恒一の筆跡は、いつもと変わらず硬く、迷いがなかった。
「人間側、か」
指揮官は呟き、手紙を机に置いた。
東京の勢力からは、すでに何度も共闘の打診が来ていた。
群馬の神城家を排し、新しい世界秩序を作ろうという誘いだ。
彼らは強敵を連続消費し、世界を加速させようとしている。
「馬鹿げている」
指揮官は窓を開けた。
潮風が部屋の中に流れ込んでくる。
「世界病は消えない。魔王も消えない。それを知らないから、そんな大きな口が叩ける」
九州の人間たちは、海の侵食災害と直接向き合ってきた。
だからこそ、世界を救うなどという英雄譚がまやかしであることを知っている。
ただ、今日もこの海岸線を維持する。
その乾いた覚悟だけが、彼らを繋ぎ止めていた。




