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ダンジョンのある世界で生きる  作者: 竜太郎


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393/451

第393話「九州の夜前」

深夜。

九州、黒崎勢力の沿岸監視所。


波の音が、暗闇の中に規則正しく響いていた。


海面に浮かぶ白影は、月光を浴びて青白く輝いている。

それは地域侵食のステップで凍りついたまま、波に洗われ続けていた。


指揮官は、火の消えかけた暖炉の前で、群馬の本家から届いた古い手紙を読み返していた。

【最後まで人間側にとどまれ】

恒一の筆跡は、いつもと変わらず硬く、迷いがなかった。


「人間側、か」

指揮官は呟き、手紙を机に置いた。


東京の勢力からは、すでに何度も共闘の打診が来ていた。

群馬の神城家を排し、新しい世界秩序を作ろうという誘いだ。

彼らは強敵を連続消費し、世界を加速させようとしている。


「馬鹿げている」

指揮官は窓を開けた。

潮風が部屋の中に流れ込んでくる。


「世界病は消えない。魔王も消えない。それを知らないから、そんな大きな口が叩ける」


九州の人間たちは、海の侵食災害と直接向き合ってきた。

だからこそ、世界を救うなどという英雄譚がまやかしであることを知っている。

ただ、今日もこの海岸線を維持する。

その乾いた覚悟だけが、彼らを繋ぎ止めていた。

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