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第392話「東京の思惑」
夜。
東京、神城勢力本部の高層ビル。
眼下に広がる街の明かりは、侵食前と変わらないように見える。
だが、その外縁部には、巨大な隔離装置の壁が黒い影となって迫っていた。
幹部たちは、群馬から送られてきた短い報告書を前に、不満の声を上げていた。
「『一時的な均衡状態』だと? 舐められたものだな」
「あの小僧、何かを隠している。全国の白影が同時に止まるなど、偶然で片付けられるはずがない」
彼らにとって、ダンジョンは征服すべき対象であり、新たなエネルギー源でもあった。
世界を維持するなどという、消極的な発想は毛頭ない。
王としての支配権を握るために、この静止の隙を突くべきだと考えていた。
「九州の黒崎分派にも動きがあるようです」
秘書が新しい書類を差し出す。
「誰もが、この静けさの次を狙っている」
中心に座る男が、冷たい目を窓の外に向けた。
「神城悠真が王にならないというのなら、我々がその座を代わりに引き受けるまでだ」
世界は救われない。
その真実を知らない者たちの欲望が、静かに、だが確実に加速し始めていた。
群馬の保った均衡の糸は、東京の暗闇の中で激しく引っ張られていた。




