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ダンジョンのある世界で生きる  作者: 竜太郎


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390/451

第390話「美月の計算」

夕方。

拠点の倉庫裏。


美月は古いノートを開き、鉛筆で数字を計算していた。


小麦粉の残量、保存食の期限、そして避難民の人数。

影が動かないということは、避難民が増えないということでもある。

それは配給の計画を立てる上で、これ以上ない好条件だった。


「美月、何してるの?」

玲奈が通りかかり、横からのぞき込んだ。


「次の三か月分の計画を見直してたの」

美月は鉛筆を耳に挟んだ。

「今までは一週間先のことしか考えられなかったから、不思議な感じ」


「世界が止まってるから?」


「ええ」

美月は遠くの補修班の背中を見た。

「悠真たちが地下で頑張ってくれたから、私たちはこうして『未来』の計算ができる。それがすごく、ありがたいなって」


玲奈は静かに頷いた。

彼女には、美月の計算する数字の向こうにある、世界の冷たい膜が感じられていた。

それは決して、楽観できるものではない。


「でも、無理はしないでね」

玲奈が美月の手をそっと握った。


「分かってる」

美月はノートを閉じた。

大演説も英雄の称賛もない。

だが、この地味な計算の積み重ねこそが、生活を維持する人々の本質だった。

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