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第389話「自衛隊の防衛線」
昼。
高崎郊外の検問所。
自衛隊の車両が、道路の脇に規則正しく並んでいた。
隊員たちは銃を肩にかけたまま、遠くの山並みを見つめていた。
そこには、侵食段階の初期に見られる「違和感」の霧が、薄く立ち込めている。
しかし、その霧は二日前から一歩もこちらへ進んできていなかった。
「本当に動かないな」
若い隊員が双眼鏡を下ろした。
「油断するな」
分隊長が厳しく嗜める。
「影の歩みが止まったからといって、世界病が治ったわけじゃない。これは嵐の前の静けさかもしれない」
彼らにとって、この静寂は不気味なものでしかなかった。
原因が分からない。
自分たちが何かを成し遂げたわけでもないのに、危機が目の前で凍りついている。
「地方政府から、神城家への物資搬入の要請が来ています」
無線兵が報告する。
「許可しろ」
分隊長は短く言った。
彼らは国家を守るためにここにいる。
だが、その国家の維持が、群馬の片田舎にいる一人の青年の行動にかかっている。
その歪な現実を、分隊長は乾いた視線で受け止めていた。
防衛線の向こうで、白影がただ静かに浮かんでいた。




