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第39話 「選ばれたもの」

 進む。


 奥へ。


 空気が変わる。


 今までとは違う。


 重さ。


 でも。


 “敵”じゃない。


「……何かいる」


 玲奈が、低く言う。


 全員が止まる。


 気配。


 でも。


 影じゃない。


 違う。


「……人?」


 蓮斗が呟く。


 姿が見える。


 奥。


 立っている。


 一人。


 人間。


「……マジかよ」


 白峰が、わずかに目を細める。


「初の遭遇だな」


 祖父が言う。


「気を抜くな」


 当然だ。


 分からない。


 敵か。


 味方か。


 その時。


 相手が、動く。


 一歩。


 ゆっくりと。


「……止まれ」


 自然に声が出る。


 相手は、止まる。


 少しだけ、間。


 そして。


「……生きてる人間か」


 低い声。


 男。


 年齢は、少し上。


 目が鋭い。


「……そっちもな」


 蓮斗が返す。


 少しだけ、空気が緩む。


 でも。


 完全じゃない。


「……何人だ」


「五人」


「……そうか」


 男が、少しだけ頷く。


「多いな」


「そっちは一人か?」


「……ああ」


 一人。


 でも。


 違和感。


 強い。


 玲奈が、低く言う。


「……強い」


 白峰も、頷く。


「同意する」


 祖父が言う。


「格が違うな」


 男が、少しだけ笑う。


「分かるか」


 その一言。


 余裕。


 でも。


 嫌な感じじゃない。


「……どこから来た」


「同じだろ」


「気づいたらここにいた」


 それは。


 同じだった。


「……戦ってるのか」


「……ああ」


 男が、少しだけ目を細める。


「……なら分かるだろ」


「これが何か」


 その問い。


 答えは。


「……分からない」


 正直に言う。


 男が、少しだけ笑う。


「だろうな」


「俺も分からん」


 でも。


「一つだけ分かる」


 全員が、そちらを見る。


「……選ばれてる」


 その一言。


 重い。


「……何にだ」


「さあな」


「でも」


「普通じゃない」


「ここにいる時点でな」


 その通りだった。


 ぴーちゃんが、震える。


「……いや」


 男が、ぴーちゃんを見る。


 一瞬。


 空気が変わる。


「……それ」


「持ってるのか」


 その言葉。


 少しだけ、警戒が強まる。


「……何だ」


「……知らないのか」


 男が、少しだけ息を吐く。


「まあいい」


「今はいい」


 でも。


 明らかに、知っている。


 何かを。


「……お前」


「強いな」


 蓮斗が言う。


「一人でやってるのか?」


「……ああ」


「それしかないだろ」


 玲奈が、少しだけ前を見る。


 似ている。


 一人で戦う。


 でも。


 違う。


 もっと。


 鋭い。


「……じゃあな」


 男が、背を向ける。


「また会うかもな」


 そのまま。


 歩いていく。


 止めない。


 止める理由がない。


 でも。


 分かる。


 あれは。


 敵になる可能性がある。


「……なんだったんだ」


 蓮斗が言う。


 白峰が言う。


「情報を持っている」


「そして」


「同じ条件にいる存在」


 祖父が言う。


「つまり」


「競争相手だ」


 その言葉。


 重い。


 玲奈が、ぽつりと言う。


「……強い」


 ぴーちゃんが、小さく震える。


「……いや」


 俺は、前を見る。


 影だけじゃない。


 この世界には。


 他にもいる。


 選ばれた存在が。


 そして。


 競うことになる。


 いつか。


 その時が来る。


 そのために。


 強くなる。


 選び続ける。


 自分で。


 その先を。


 選ばれているのは、自分たちだけじゃない。


 それが。


 この世界の現実だった。



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