第38話 「試される価値」
進む。
見られている。
分かっている。
それでも。
足は止まらない。
「……なあ」
蓮斗が、ぽつりと言う。
「何見られてんだろうな」
その一言。
誰も、すぐには答えない。
白峰が言う。
「戦闘能力」
「スキル」
「行動」
「選択」
「……全部だな」
祖父が、短く言う。
「浅い」
「……は?」
「そんなものは、どこにでもある」
その言葉。
少しだけ、考える。
確かに。
強さ。
戦い。
それだけなら。
ここじゃなくてもいい。
「……じゃあ何だ」
自然に聞く。
祖父は、少しだけ間を置いて言った。
「選び方だ」
「……選び方?」
「何を取って」
「何を捨てるか」
その言葉。
妙に、しっくりくる。
因子。
使うか、使わないか。
戦い方。
最適か、崩すか。
全部。
選択だった。
白峰が言う。
「確かに」
「我々は常に選択している」
「そして」
「それが結果に直結している」
玲奈が、ぽつりと言う。
「……どっちでもいい」
「……は?」
「……強ければ」
「……生きる」
シンプル。
でも。
違う。
「……違うな」
自然に出た。
「強くても」
「死ぬやつは死ぬ」
蓮斗が言う。
「それはそうだな」
祖父が頷く。
「だから選べ」
「……何を」
「どう生きるかだ」
その一言。
静かで。
でも。
重かった。
ぴーちゃんが、小さく揺れる。
「……いい」
その言葉。
安心する。
少しだけ。
でも。
その時。
【評価基準を更新】
全員が止まる。
「……は?」
白峰が、低く言う。
「……今の」
「変わったぞ」
祖父が言う。
「聞いていたな」
玲奈が、少しだけ顔を上げる。
「……反応した」
ぴーちゃんが、震える。
「……いや」
その一言。
強い拒絶。
分かる。
今のは。
まずい。
「……見てるだけじゃないな」
蓮斗が言う。
「変えてきてるぞ」
白峰が言う。
「観測→評価→更新」
「完全なループだ」
祖父が、低く言う。
「つまり」
「俺たちの選択で」
「世界が変わる」
その一言。
全員が、理解する。
これは。
ただのダンジョンじゃない。
ただの戦いでもない。
選べば。
変わる。
世界そのものが。
「……面白ぇな」
蓮斗が笑う。
「じゃあよ」
「好きにやるしかねぇじゃん」
玲奈が、小さく頷く。
「……うん」
白峰が言う。
「ならば」
「意図的に選ぶべきだな」
祖父が言う。
「当たり前だ」
俺は、前を見る。
選ぶ。
それだけで。
変わる。
なら。
選び続ける。
自分で。
この先を。
ぴーちゃんが、小さく揺れる。
「……いこう」
小さく頷く。
進む。
さらに奥へ。
この世界の。
もっと深いところへ。
試されているのは、強さじゃない。
“選び方”だ。
それが。
少しだけ、見えてきた。




