第40話 「交差する選択」
進む。
でも。
頭の中には、残っている。
あの男。
一人で戦う存在。
そして。
“知っている”感じ。
「……気になるな」
蓮斗が言う。
「さっきのやつ」
「……ああ」
白峰が頷く。
「情報を持っている」
「そして」
「我々とは違う選択をしている」
玲奈が、ぽつりと言う。
「……強い」
祖父が言う。
「だが」
「違う」
「……何がだ」
「選び方だ」
その言葉。
さっきの話と繋がる。
選択。
それが。
この世界の本質。
その時。
気配。
「……またか」
全員が構える。
でも。
影じゃない。
違う。
足音。
近づいてくる。
そして。
「……また会ったな」
あの男。
さっきと同じ。
でも。
少しだけ。
違う。
血。
傷。
でも。
立っている。
「……無事か」
自然に聞く。
「見れば分かるだろ」
軽く笑う。
「死んでない」
蓮斗が笑う。
「しぶといな」
「お互いな」
少しだけ。
空気が軽くなる。
でも。
すぐに戻る。
「……聞きたいことがある」
白峰が言う。
「因子についてだ」
男が、少しだけ止まる。
「……使ってないのか」
「……ああ」
その答えに。
男が、わずかに目を細める。
「……珍しいな」
「普通は使う」
「強くなるために」
蓮斗が言う。
「やっぱそうなのか」
「……ああ」
「使えば強くなる」
「それは間違いない」
でも。
「……代わりに?」
自然に聞く。
男が、少しだけ笑う。
「さあな」
「分からん」
「でも」
「戻れなくなる感じはあるな」
その言葉。
重い。
ぴーちゃんが、強く震える。
「……いや」
玲奈が、低く言う。
「……使ったのか」
男が、少しだけ沈黙する。
そして。
「……ああ」
短く答える。
「いくつかはな」
その瞬間。
分かる。
違和感の正体。
この男。
“少し違う”。
「……どうなった」
「強くなった」
即答。
「それだけだ」
でも。
「……それだけじゃないだろ」
白峰が言う。
男が、少しだけ笑う。
「鋭いな」
「……感覚が変わる」
「……は?」
「戦いが簡単になる」
「迷いが減る」
「でも」
「何かが減る」
静かな言葉。
でも。
確実に。
怖い。
「……何がだ」
「さあな」
「まだ分からん」
でも。
分かる。
これは。
ただの強化じゃない。
選択だ。
そして。
分岐だ。
男が、こちらを見る。
「お前らは使わないのか」
少しだけ、間。
「……使わない」
はっきりと言う。
男が、少しだけ笑う。
「……そうか」
「いい選択だ」
その言葉。
意外だった。
「……お前は」
「使ってるのにか?」
「だからだ」
その一言。
重い。
「……戻れないってのは」
「そういうことだ」
静寂。
誰も、すぐには動けない。
男が、背を向ける。
「……またな」
「次は」
「敵かもしれん」
そのまま。
歩いていく。
止めない。
止められない。
そして。
分かる。
あれが。
もう一つの道。
強くなる道。
でも。
違う。
俺たちとは。
選ばなかった道。
俺は、前を見る。
どっちが正しいかは分からない。
でも。
選んだ。
自分で。
だから。
進む。
このまま。
その先へ。
選択は交わる。
でも。
同じにはならない。
それが。
この世界だった。




