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ダンジョンのある世界で生きる  作者: 竜太郎


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387/451

第387話「均衡の翌朝」

朝。

神城家の台所。


古い換気扇が、低い音を立てて回っていた。


悠真は一人、パイプ椅子に腰掛けて白湯を飲んでいた。

喉を通る温かさが、昨日までの地下の冷気と混ざり合う。

体の中の感覚は、まだあの青い壁の脈動をうっすらと記憶していた。


「悠真、早いな」

恒一が起きてきて、タオルで顔を拭いながら言った。


「あまり眠れなかった」

悠真はカップを置いた。


「深部が静かすぎるからか」


「ああ」

悠真は窓の外を見た。

「動いている時より、止まっている時の方が、世界の重さを感じる」


恒一は何も言わず、古いラジオのスイッチを入れた。

流れてきたのは、いつものノイズ混じりの地方ニュースだった。

東京の市場の価格、九州の物流の遅れ、そして北海道の天候。

世界病による侵食が始まってから、ニュースの内容は驚くほど変わらない。


悲劇にも慣れ、静止にも慣れる。

人々はただ、その枠組みの中で今日を生きる準備をしていた。

英雄がいない世界だからこそ、この退屈な朝の風景が、何よりも重い意味を持っている。


「朝飯にするか」

恒一が冷蔵庫を開けた。

日常を維持するための最初の仕事が、静かに始まった。

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