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第386話「六月二十九日の終わりに」
夜。
拠点の外壁。
見張り班の交代の時刻だった。
懐中電灯の光が交差し、短い挨拶が交わされる。
「異常なし」
「ああ、異常なしだ」
それだけの会話で、今日の終わりが確認される。
白峰蓮のノートには、今日の分の記録が新しく追加されていた。
【六月二十九日・世界各地における深部反応の静止状態を継続。特記すべき拡大傾向なし】
世界は救われなかった。
魔王も消えず、侵食もそのままだ。
大長編の物語は、まだ三百八十六話。全体の半分を少し過ぎたあたりに過ぎない。
終わりに向けて世界が加速することもなく、強敵が次々と消費されることもない。
ただ、壊れないように見守る人々の記録が、今日も静かに積み上がった。
悠真は自室の窓から外を見た。
白影は変わらずそこにある。
だが、その輪郭は昨日よりもさらに日常の景色に溶け込んでいるように見えた。
明日もまた、同じ朝が来る。
その単純な事実を維持するために、彼らはそれぞれの場所で、静かに目を閉じた。
六月二十九日の夜が、ゆっくりと更けていく。




