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第384話「台湾のユナ」
朝。
台湾管区、亜熱帯の湿地帯。
ユナ勢力の監視所からは、霧の向こうに巨大な隔離装置の基部が見えていた。
湿気を含んだ風が、鉄塔の錆を揺らす。
ここでも、地域侵食のステップは一時的に停止していた。
違和感から始まった異常が、国家規模へ広がるのを防いでいる最後の砦。
ユナは双眼鏡を覗きながら、静かに息を吸い込んだ。
「群馬の均衡者が、何かに触れたのね」
「そのようです」
隣の偵察員が答える。
「東京の本部もこの現象の解析に躍起になっていますが、核心には辿り着いていません」
ユナは双眼鏡を下ろした。
「辿り着かなくていいわ。欲を出せば、この均衡はすぐに崩れる」
彼女の勢力は、世界の進行順において中盤以降に位置する。
今はまだ、群馬や東京の動きを見守る段階だった。
しかし、世界が勝手に動く感覚を、彼女もまた強く実感していた。
「私たちも維持の準備を」
ユナが歩き出す。
「神城悠真が倒れるか、持ちこたえるか。どちらにしても、私たちの番は来る」
霧の中に消えていく装置の光は、南国の朝の光に混ざりながら、静かに明滅を繰り返していた。




