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第380話「蓮斗の研磨」
夜。
拠点の倉庫。
蓮斗は一人で、古いナイフの刃を研いでいた。
砥石と鋼が擦れ合う、規則的な音が暗闇に響く。
地下での調査が終わっても、彼のやるべき仕事は変わらなかった。
周囲の警戒、足元の確認、そして仲間の盾になること。
「熱心だな」
悠真が入り口から入ってきた。
蓮斗は手を止めず、刃の角度を微調整した。
「次の降下がいつあってもいいようにだ」
短く言う。
「深部は安定しているが」
「だからこそだ」
蓮斗がようやく顔を上げた。
「静かだからって、安全になったわけじゃない。地下の瓦礫の崩れ方を見たろ。全体の圧力が変わってる。次に行くときは、もっと危険かもしれない」
悠真は近くの木箱に腰掛けた。
蓮斗のその飾らない慎重さが、どれほどチームを救ってきたかを知っていた。
守ることの意味を大仰に語らず、ただ次の事態に備えて牙を研ぐ。
「頼りにしてる」
悠真が言う。
「お前が前しか見ないからな」
蓮斗は再びナイフを砥石に当てた。
「後ろを支える奴がいないと、神城家も形無しだろ」
乾いた音が、再び倉庫の中に響き渡り始めた。




