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第379話「玲奈の境界」
夜。
玲奈の部屋。
明かりは消され、窓から差し込む青い光だけが室内を照らしていた。
玲奈はベッドの上に座り、自分の両手を見つめていた。
地下での接触以降、彼女の感覚は地上の白影とも微かにつながっている感覚があった。
それは不快な侵食ではなく、冷たく硬い膜が世界を覆っているような、不思議な感触だった。
「また、聞こえる?」
隣に座ったぴーちゃんが、小さな声で聞いた。
玲奈は首を振った。
「ううん。今は静か。でも、起きてる」
「怒ってる?」
「いいえ」
玲奈は目を閉じた。
「ただ、耐えてる。私たちのために、あの壁がずっと重いものを支えてくれてる」
かつては恐怖でしかなかった侵食の正体。
それが人類の残した絶望の記憶であり、ダンジョンはその隔離装置なのだと知った今、玲奈の中で世界の景色は完全に塗り替えられていた。
恐怖は消えない。だが、理解することはできる。
自分の力が、世界異常の観測だけでなく、その維持のための架け橋になるのなら。
玲奈は深く息を吐き、再び目を開けた。
窓の外の白影は、今夜も静かに世界を見守るように浮かんでいた。




