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ダンジョンのある世界で生きる  作者: 竜太郎


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378/451

第378話「黒崎の柱」

夕方。

拠点の中庭。


黒崎恒一は、補強された支柱の根元を杖で叩いていた。


古いコンクリートには、いくつもの細かいひび割れが入っている。

それを職人たちが、新しい樹脂で丁寧に埋めていた。

劇的な変化はない。ただ、崩壊を遅らせるための地味な作業が続いていた。


「悠真」

恒一が背後に立つ孫を振り返らずに呼んだ。


「ここにいる」

悠真が歩み寄る。


「東京の連中は、この静止を利用して次の利権を考えているだろう」

老人の声は低く、確かだった。

「だが、お前は惑わされるな。この拠点の柱は、お前が人間側にとどまり続けることだ」


「分かってる」

悠真は空を見上げた。

「俺は征服者にはならない。王にもならない」


「そうだ」

恒一がようやく悠真を見た。

「世界を維持するというのは、英雄になることより遥かに泥臭い。誰も褒めてはくれんし、終わりもない。だが、誰かがやらねば、砂のように崩れる」


職人たちが次の柱へと移動していく。

大きな演説も、英雄としての凱旋もない。

ただ、明日もこの場所で人が生きるための土台を、二人は静かに見つめ合っていた。

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