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ダンジョンのある世界で生きる  作者: 竜太郎


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377/451

第377話「日常の底流」

昼。

拠点の配給所。


大きな鍋から、白い湯気が立ち上っていた。


美月は子どもたちの古い器に、温かいスープを順番に注いでいた。

鐘が鳴らない二日間。それはこの避難区画にとって、奇跡のような平穏だった。

子どもたちの顔からも、少しだけ強張りが消えているように見えた。


「ねえ、美月お姉ちゃん」

一人の男の子がスープをすすりながら言った。

「外の白い影、もう大きくならないの?」


美月はしゃがみ込み、男の子の目を見た。

「今はね、お休みしてるみたいだよ」


「ずっとお休み?」


「それは分からないけれど」

美月は静かに微笑んだ。

「だから、今食べられるものを、しっかり食べておこうね」


嘘はつかない。それが美月のやり方だった。

世界がこのまま元通りになることはない。侵食は消えず、魔王もそこにいる。

それでも、この一杯のスープの温かさは本物であり、それを分かち合う時間は今ここにある。


遠くで、補修班が木材を運ぶ掛け声が聞こえた。

世界が壊れないように、誰かがどこかで支えている。

悠真たちが地下で何をしたのか、美月は詳細を知らない。

だが、その結果として守られたこの小さな日常の底で、人々は確かに息をしていた。

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