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ダンジョンのある世界で生きる  作者: 竜太郎


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376/451

第376話「自衛隊の視点」

昼。

駐屯地の一室。


無線機から流れる雑音の中に、地方政府の動向が混ざっていた。


自衛隊の連絡官は、送られてきた世界断面のグラフを指でなぞった。

群馬を起点とした数値の安定。それが全国の観測所に波及している事実は、彼らの戦術思想にはないものだった。


「敵の作戦行動が停止した、と判断すべきか」

若い隊員が尋ねる。


連絡官は首を横に振った。

「侵食は生物ではない。作戦もなければ、意志もない。これはただの現象だ」


彼らにとって、ダンジョンは排除すべき脅威だった。

だが、どれだけ火力を投入しても、侵食の段階は進み、地域は削られていった。

今起きている静止は、彼らの防衛線が機能した結果ではなかった。知らないところで、知らない原理によって、世界が勝手に止まっている。


「地方政府は群馬との接触を強化しているようです」

隊員が報告書を置く。


「神城家か」

連絡官が呟いた。

「彼らは王にはならないと言いながら、結果として世界の中心にいる。それが何を意味するのか、彼ら自身も分かっていないのかもしれん」


窓の外では、雪に埋もれた装甲車が並んでいた。

守るべき国家の形がどれだけ変容しようとも、彼らはただ、与えられた任務を遂行するしかない。その乾いた自覚だけが、部屋を満たしていた。

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