第367話「通信の試み」
深夜。
地下。
青い光の中。
無線機を挟んで、悠真の手が壁に触れた。
その瞬間、頭の中に音が流れ込んできた。言葉ではない。それは古い機械が発するような、規則的な電子音の連なりに似ていた。ツー、トン、ツー。一定の間隔を置いて繰り返されるその響きは、何かを求めているようでもあり、あるいは自分の存在をただ主張しているようでもあった。
ぴーちゃんが悠真の髪を小さく引っぱる。
「きこえる」
短い声。
「よんでる。こっちをみてる」
悠真は目を閉じた。頭の中の音に向き合う。
自分たちがここにいること。戦いに来たのではないこと。壊すために来たのでもないこと。ただ、この場所で生きていくために、あなたの状態を維持したいということ。その意思を、手のひらを通じて無線機の金属の枠に込める。言葉を介さない思考の伝達。それが深部に届いているのか、悠真には確信が持てなかった。
だが、壁の青い光が、無線機の隙間から漏れ出すようにして激しく明滅し始めた。
白峰蓮のペンが、記録紙の上で激しく躍る。
「発光周期に明確な規則性が発生。これは……」
蓮の言葉が途切れる。
壁から伝わってくる振動が、悠真の腕を伝って体全体を揺らしていた。それは痛みを伴わない、だが決して拒絶できない巨大な存在の足音のようだった。深部は、人間の持ち込んだ小さな道具を通じて、確かに何かを受け取ろうとしていた。




