第364話「再びの降下」
深夜。
地下トンネル。
四人は再び、鉄のレールの上を歩いていた。
懐中電灯の光が、湿ったコンクリートの壁を白く浮き上がらせる。二日前の足跡が、うっすらと残っていた。誰も言葉を発しない。トンネルの奥から吹いてくる風は、前回よりも少しだけ温度が低く感じられた。それは深部反応の静止がもたらした変化なのか、あるいは地上の季節の移り変わりによるものなのか、誰にも分からなかった。ただ、世界の呼吸が少しだけ変わったことだけは、全員が肌で感じていた。
蓮斗が先頭で立ち止まる。
「崩落の形が変わってる」
光を一箇所に固定しながら言う。
天井から落ちたと思われる小さな瓦礫が、レールの隙間に新しく挟まっていた。
「深部が止まった時の反動か」
蓮が歩み寄り、ペンを走らせる。
「大きな崩壊ではない。だが、内部の圧力が再分配された証拠」
「通れるか」
悠真が聞く。
蓮斗が瓦礫を足で退け、頷く。
「問題ない。だが、足元は悪くなってる。気をつけろ」
玲奈は目を閉じたまま、一歩一歩を踏みしめていた。
彼女の耳には、トンネルの奥から響く微かな音が届いていた。それは二日前のような苦しげな呻きではなく、何かを堪えるような、引き締まった硬い音だった。変化は始まっている。戻る道はない。世界が次の段階へ進もうとするのを、四人の足音が静かに追っていた。




