第358話「朝の報告」
朝。
蒼月レインの部屋。
悠真は地下で起きたことを報告していた。
壁の発光。触れた時の反応。ぴーちゃんが感じたこと。玲奈の言葉。白峰蓮の記録の概要。全部、順番に話す。感想は省く。事実だけを並べる。蒼月にはその方が届くと思っていた。感情的な言葉より、事実が並ぶ方がこの人には伝わる。それは最初に話した時から感じていた。蒼月は自分の感情を前面に出すタイプではない。だから話す側も、なるべく感情を省いて話す。そうすることで初めて、互いの言葉が同じ重さで受け取れる気がした。それが蒼月との話し方として、いつの間にか悠真の中に定着していた。
蒼月は静かに聞いていた。途中で止めない。質問もしない。最後まで聞く。
悠真が話し終える。しばらく沈黙が続く。
蒼月が言う。
「深部が疲れている。それが全ての異常の原因だということか」
悠真が頷く。
「接触で呼吸が楽になった。それは有効だということだ」
「また降りるのか」
「降りる。次は意思を伝えたい。ただ触れるだけじゃなくて」
「何を伝える」
「均衡者がここにいるということを。維持しようとしている人間がいるということを」
蒼月が悠真を見る。その言葉の意味を確かめるように、少し間を置いた。悠真もその間を崩さない。蒼月に急かされることは今まで一度もなかった。考える間を大切にする人間だと知っていた。それが蒼月の判断の正確さに繋がっているのだと、悠真には分かっていた。
「私にできることがあれば言ってください」
蒼月が静かに言った。
窓の外では朝の区域が動いていた。




