第357話「地上に出る」
早朝。
地下の扉の前。
四人が外に出た。
朝の空気が体を包む。冷たい。白い息が出る。雪煙が舞っている。蒼月残存区域は昨日と変わらない光景だった。外壁布が揺れている。遠くで鳥の声がする。補修班が道具を持ち始めている。配給班が朝の準備をしている。生活は続いていた。地下で何が起きていても、地上では朝が来る。世界はそういう仕組みで動いていた。その当たり前が、今日は昨日より少し違う意味を持って見えた。
悠真は空を見上げる。白影がある。北と東に。だが昨日より輪郭が少しだけ落ち着いている気がした。揺れが小さい。広がりが止まっている。気のせいかもしれない。それでも、地下で何かに触れたことがこちらにも影響を与えているとしたら。その可能性を、今日初めて本気で考えていた。一時的なものか、持続するものかは分からない。だがゼロではないかもしれないという感触だけが、体に残っていた。それが今日の一歩目だと思った。
蓮斗が大きく息を吸う。
「地上の空気はいいな」
短く言う。
玲奈が空を見る。
目を細める。
何かを感じ取ろうとして、少し考えて、やめる。
今は休む時間だ、と判断したように見えた。
感じ続けることは消耗する。昨日の地下で、玲奈はその限界を体感した。オンとオフを切り替えられるようになった。それがこの数か月での玲奈の変化だった。悠真はその横顔を見ながら、自分もまだ学んでいる途中だと思った。
白峰蓮が記録紙を確認する。全部揃っている。
ぴーちゃんが言う。
「帰ってきた」
区域の朝が始まっていた。




