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ダンジョンのある世界で生きる  作者: 竜太郎


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353/451

第353話「玲奈が聞いたもの」

深夜。

地下。

青い光の中。


玲奈はまだ目を閉じていた。


深部から来るものを、今は絞って感じている。洪水にならないように、必要なものだけを丁寧に拾う。昨日の限界を超えた経験が、今日の絞り方を教えてくれていた。全部感じようとするのではなく、一つだけ選んで深く聞く。それが今の玲奈のやり方だった。はじめてこの力を持ったとき、何も制御できなかった。感じたくないものまで流れ込んできて、眠れない夜が続いた。今は違う。扉を自分で開け閉めできるようになってきた。少しずつ、自分のペースで世界を受け取れるようになっていた。


悠真が壁に触れた後、何かが変わった。変化は小さかった。だが確実にあった。


玲奈が小さく言う。

「呼吸が少し楽になった」

悠真が聞く。

「深部が?」

玲奈が頷く。

「さっきまでは苦しそうだった。今は少し違う。重さが変わった気がする」

蓮が記録する。

玲奈は言葉を続ける。

「叫んでない。怒ってもいない」

静かな声。

「ただ在り続けてる。在り続けることに、疲れてる何かがそこにある」


誰も返事をしない。その言葉が地下の空気の中に広がっていく。疲れている深部。三か月間、白影を出しながら、影を動かしながら、それでも在り続けてきたもの。地上で勢力の思想がぶつかり合い、人間が争いを続けていた間、深部はただ静かに限界へ向かっていた。世界はそれを知らないまま、今日も動いていた。玲奈はそれを、言葉にならない重さとして感じ続けていた。


「人間みたいだな」

蓮斗がぽつりと言う。


誰も否定しなかった。玲奈が小さく頷く。その沈黙が、答えだった。

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