表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ダンジョンのある世界で生きる  作者: 竜太郎


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
352/451

第352話「蓮の記録」

深夜。

地下。

青い光の中。


白峰蓮は手を止めなかった。


発光の変化を記録する。触れる前と後で何が変わったか。温度の推移。振動のリズム。壁の色の濃淡。全部を数字と言葉で書き留めていく。分からないことは「不明」と書く。推測は「推測」と明記する。断言できないことは断言しない。それが蓮のやり方だった。感情で書かない。印象で書かない。後で読んだ人間が同じ場所に立ったように理解できる記録を残す。それだけを目的として、蓮はこの数か月間書き続けてきた。


蓮斗が横から覗く。

「そんなに書くことあるのか」

短く言う。

蓮が答えない。書き続ける。

しばらくして蓮斗が続ける。

「なんで記録するんだ。こんな場所で」

蓮は少し手を止める。

「後で誰かが読む」

静かな声。

「今ここで起きたことを知らない人間が、この記録を読んで判断する。そのために書く」


蓮斗が黙る。その答えは想定外だったのか、しばらく何も言わなかった。答えを考えているのか、ただ飲み込んでいるのか、どちらか分からなかった。蓮には、どちらでも構わなかった。記録する理由を誰かに理解してもらうために書いているわけではない。未来の誰かが判断するための材料として書いている。今夜地下で起きたことが、いつか誰かの決定の根拠になる。その一点だけを信じて、ペンを動かし続けていた。自分が正しいかどうかは、記録には関係なかった。


玲奈が目を開けないまま言う。

「私が感じたことも書いて」

蓮が頷く。ペンが動く。


地下の青い光が壁を照らしていた。静かで、穏やかで、どこか悲しい光だった。この記録が、いつか誰かの判断の基礎になる。それだけは確かだと、蓮は思っていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ