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第344話「地下の空気」
午後。
地下列車のホーム。
懐中電灯に照らされたプラットフォームは、時間が止まったような場所だった。ベンチがある。案内板がある。発車時刻表がまだ貼られている。ただ、全部が薄く埃をかぶっていた。侵食が始まる前の、普通の日常がそのまま固まっていた。
白峰蓮が記録紙を取り出す。
「観測所まで直線で約二十キロ。途中に三つの分岐がある。地図は古いから実際に使えるかは降りてみないと分からない」
静かな声で確認する。
蓮斗がホームの端まで歩く。線路を見る。錆びているが、形は保たれている。
「列車は動かなくてもレールを歩けるな」
短く言う。
悠真が周囲を見る。侵食の痕跡はここにはない。外壁の外とは別の世界だった。
その時。玲奈が静かに言う。
「ここ、守られてる」
目を閉じたまま。
「何かに、意図的に」
悠真が止まる。
意図的に守られている地下。それが何を意味するか、まだ分からない。だが。
この場所には来るべき理由があったのかもしれない。
そう思いながら、悠真は先のトンネルを見た。




