329/451
第329話「美月の見たもの」
昼。
避難区画。
美月は子どもたちの様子を見ていた。
今日も走っている。
笑っている。
変わらない。
だが。
美月は気づいていた。
子どもたちの遊び場所が変わっている。
以前は外壁に近い場所で遊んでいた。
今は区画の中心寄りになっている。
誰かに言われたわけではない。
子どもたちが自然にそうなっていた。
子どもは敏感だ。
空気を読む。
大人が言葉にしないものを感じ取る。
美月はそれが少し切なかった。
その時。
小さな男の子が走ってくる。
「美月お姉ちゃん」
元気な声。
「今日のごはん何」
美月は笑う。
「スープだよ」
短く答える。
男の子が少し考える。
「また?」
美月が笑う。
「また」
短く。
男の子も笑う。
走って戻っていく。
その背中を見ながら。
美月は思う。
この笑い声が続く限り。
ここはまだ大丈夫だ。
(次話へ)




