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第323話「白影の朝」
朝。
蒼月残存区域。
風が止まっていた。
珍しかった。
この区域で風が止まることは滅多にない。
補修班が気づく。
見張り班も気づく。
子どもたちも外を見る。
いつもと違う。
そう感じていた。
悠真は外壁の上にいた。
北を見る。
影。
今日もいる。
だが。
今日は違った。
白い。
遠くに白い靄のようなものが漂っている。
白峰蓮が双眼鏡を向ける。
長い沈黙。
そして。
「白影だ」
静かな声。
初めて聞く言葉だった。
「前に記録にあった」
短く続ける。
「深部反応が臨界に近づいた時に出る」
悠真が北を見る。
白い靄は動かない。
ただそこにある。
玲奈が目を閉じる。
風が戻ってくる。
ゆっくり。
冷たい風。
そして。
「……始まる」
小さい声。
誰も聞き返さなかった。
その言葉の意味は。
皆なんとなく分かっていた。
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