第32話 「その先にあるもの」
静かだった。
さっきまでの激戦が、嘘みたいに。
でも。
身体は正直だった。
「……はぁ……」
蓮斗がその場に座り込む。
「マジでギリギリだったな」
「限界に近い」
白峰も壁に寄りかかる。
玲奈は立ったまま。
でも。
少しだけ、呼吸が荒い。
祖父が言う。
「よくやった」
短い。
でも。
はっきりした評価だった。
ぴーちゃんが、ふわっと揺れる。
「……すごい」
その一言で。
少しだけ、実感が出る。
届いた。
完全じゃない。
倒したわけでもない。
でも。
あの存在に。
触れた。
「……なあ」
蓮斗が、少しだけ笑う。
「さっきのやり方」
「ヤバくねぇか?」
「……ああ」
白峰が頷く。
「再現性は低い」
「だが」
「効果は高い」
祖父が言う。
「使い方次第だな」
玲奈が、ぽつりと言う。
「……まだ足りない」
その一言。
全員が頷く。
そうだ。
届いた。
でも。
勝ててはいない。
まだ。
その先がある。
俺は、手を見る。
因子。
使っていない。
でも。
使わなくても。
ここまで来れた。
それが。
大きい。
「……選べるな」
自然に口に出る。
「は?」
蓮斗が聞き返す。
「使うか」
「使わないか」
「どっちも」
白峰が、少しだけ目を細める。
「選択肢が増えたな」
祖父が言う。
「それが強さだ」
玲奈が、こちらを見る。
「……うん」
小さく頷く。
ぴーちゃんが、ふわっと光る。
「……いい」
その一言で。
少しだけ、確信が強くなる。
俺たちは。
変わった。
前とは違う。
戦い方も。
考え方も。
全部。
一段上に。
でも。
それで終わりじゃない。
その時。
奥から。
音。
ゆっくりと。
でも。
確実に。
「……来るな」
祖父の声。
全員が立ち上がる。
さっきとは違う。
でも。
似ている。
気配。
重い。
濃い。
そして。
増えている。
「……二体?」
白峰が言う。
影。
二つ。
同じ存在。
並んでいる。
「……マジかよ」
蓮斗が笑う。
「今度は倍か」
玲奈が、低く言う。
「……やばい」
ぴーちゃんが震える。
「……だめ」
でも。
逃げない。
今は。
違う。
さっきまでの俺たちじゃない。
「……やるぞ」
全員が頷く。
まだ足りない。
でも。
進める。
この先へ。
さらに上へ。
そのために。
戦う。
その先にあるものを掴むために。




