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第316話「ぴーちゃんが嫌だと言った」
昼前。
拠点内部。
肩のぴーちゃんがいつもと違った。
跳ねない。
鳴かない。
ただじっと、北の方向を向いて動かなかった。
悠真が小さく名前を呼ぶと、ぴーちゃんはゆっくり振り向いて「嫌な感じ」とだけ言った。
その言葉が妙に重かった。
怖いとも痛いとも違う。
嫌、という言葉を選ぶのは初めてだった。
「あっちに何がいるか分かるか」と静かに聞くと、ぴーちゃんは長い間黙った後、「一つ。でもたくさん飲んだ」と答えた。
飲んだ。
その言葉の意味をすぐには理解できなかった。
だが少し経って、輪郭が見えてきた。
何かが、北海道全域に散らばっていた異常を、自分の中へ取り込んでいる。
「近づかない方がいい」とぴーちゃんは続けた。
「今は」
その二文字が、悠真の胸の中にしばらく残った。
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