317/451
第315話「均衡の重さ」
朝。
蒼月残存区域。
風が吹いていた。
外壁布が揺れる。
雪煙が流れる。
補修班が動く。
配給班が準備する。
いつもの朝。
そう見えた。
だが悠真は外壁の上から北を見ながら、その「いつも通り」がひどく嘘くさく感じていた。
玲奈が昨夜言った言葉が頭から離れない。
一つが全部取り込んだ。
白峰蓮が三か月かけて積み上げた記録紙も、同じことを数字で語っていた。
侵食は広がらない。増えない。ただ一点へ向かって沈んでいく。
悠真は双眼鏡を北へ向ける。
影は今日もいる。
遠い。
しかし以前とは明らかに違う存在感があった。
ただ立っているのではなく、何かを待っている。
その感覚が、今日は悠真にもはっきりと伝わってきた。
均衡者として動くべき時が近づいている。
そのことだけは、理屈より先に体が知っていた。
(次話へ)




