307/451
第305話「積み上がる記録」
午後。
外壁上。
観測班。
記録紙。
双眼鏡。
風。
白い息。
北。
影。
今日もいる。
動いている。
ゆっくり。
本当にゆっくり。
だが。
止まらない。
その時。
白峰 蓮が過去記録を並べる。
三か月分。
積み上がった紙束。
観測記録。
侵食記録。
異常記録。
全て残っている。
悠真が横から見る。
蓮は言う。
「普通じゃない」
短く。
紙を指差す。
侵食は本来。
広がる。
溢れる。
拡散する。
だが。
今回は違う。
中心へ。
沈む。
集まる。
圧縮される。
まるで。
何かが吸い寄せているみたいだった。
その時。
玲奈が目を閉じる。
長い沈黙。
そして。
「……一つ」
小さい声。
皆が見る。
玲奈は続ける。
「いっぱいじゃない」
短く。
「一つ」
風が吹く。
誰も喋らない。
その言葉だけが残った。
侵食が集まっている。
もしそうなら。
今まで考えていたものとは。
全く違う話になる。
(次話へ)




