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第300話「三百話目の昼」
昼前。
配給区画。
湯気。
白い灯り。
温かいスープ。
人が集まる。
笑い声もある。
泣き声もある。
北海道は生きていた。
その時。
小さな女の子が老人へ聞く。
「おじいちゃん」
老人が振り向く。
「なんだ」
優しい声。
女の子が少し考える。
そして聞く。
「怖い?」
小さい声。
老人は少し黙る。
周囲も静かになる。
皆。
答えを待っていた。
老人はゆっくり頷く。
「怖いぞ」
短く。
女の子が止まる。
だが。
老人は笑った。
「でもな」
静かな声。
「怖いから皆で飯食うんだ」
短く。
「怖いから皆で生きる」
女の子は少し考える。
そして。
小さく頷いた。
周囲の大人たちも少し笑う。
英雄はいない。
特別な奇跡もない。
だが。
人は残っている。
三百話目の昼。
北海道は今日も。
生活を続けていた。
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