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第296話「冬の教室」
昼前。
避難区画。
空き倉庫を使った簡易教室。
机はバラバラ。
椅子も足りない。
それでも。
子どもたちは集まっていた。
勉強の時間だった。
教師は元学校職員の女性。
黒板代わりの板へ文字を書く。
子どもたちが真似する。
間違える。
笑う。
普通の光景だった。
その時。
一人の子どもが手を上げる。
「先生」
小さい声。
「大人になったら何するの?」
教室が少し静かになる。
女性は少し考えた。
そして笑う。
「好きなことかな」
短く。
子どもたちが首を傾げる。
女性は続けた。
「料理でも」
「建築でも」
「探検でも」
静かな声。
「なんでもいい」
その言葉を聞きながら。
美月は教室の外から見ていた。
未来の話。
それが普通にできる。
そのことが嬉しかった。
外では影が近づいている。
でも。
ここでは未来の話をしていた。
それだけで十分だった。
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