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第291話「朝の維持」
朝。
蒼月残存区域。
風が吹いていた。
外壁布が揺れる。
雪煙が流れる。
以前なら。
ただの朝の風景だった。
今は違う。
北に影がいる。
その事実が。
全ての景色に重なっていた。
それでも。
人は起きる。
配給班は鍋を準備する。
補修班は工具を持つ。
診療区画ではぴーちゃんが薬品を確認する。
子どもたちは水を運ぶ。
生活は続いていた。
その時。
黒崎恒一が拠点を歩く。
配給所。
診療所。
補修区画。
順番に見る。
特別なことはしない。
声を掛けるだけ。
「寒くないか」
「足りてるか」
短い言葉。
だが。
皆が少し安心する。
柱とは。
そういうものだった。
その時。
悠真が外壁へ上がる。
北を見る。
影。
今日もいた。
遠い。
だが。
確実に見える。
逃げも隠れもしない。
ただ。
こちらを見ている。
そんな気がした。
風だけが。
静かに流れていた。
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