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第286話「消えない灯り」
夜。
配給区画。
白い灯り。
温かいスープ。
人々が座っている。
静かだった。
だが。
暗くはなかった。
老人が子どもへ昔話をしている。
子どもたちが聞く。
笑う。
驚く。
小さな声。
補修班は遅い夕食を取っている。
見張り班は交代前の休憩。
ぴーちゃんは薬を配る。
美月は毛布を畳む。
いつも通りだった。
その時。
遠く。
カァン。
鐘。
一回。
長い音。
皆が少し止まる。
でも。
すぐ戻る。
もう慣れた。
慣れたくなかったが。
慣れてしまった。
その時。
黒崎恒一が灯りを見渡す。
人がいる。
笑い声がある。
生活がある。
そして。
小さく言う。
「まだ大丈夫だな」
静かな声。
誰に向けたわけでもない。
だが。
近くにいた美月は聞いていた。
少しだけ笑う。
外。
北。
影は近づいている。
侵食も続いている。
それでも。
灯りは消えていない。
だから。
北海道も。
まだ終わらなかった。
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