285/451
第283話「いつもの朝」
朝。
蒼月残存区域。
風が吹いていた。
外壁布が揺れる。
雪煙が流れる。
配線が小さく鳴る。
久しぶりに戻った音。
だが。
誰も安心していなかった。
影は来る。
皆。
それを知っている。
それでも。
朝は来る。
配給班は鍋を運ぶ。
補修班は工具を持つ。
見張り班は交代する。
子どもたちは水を運ぶ。
いつも通り。
北海道は動いていた。
その時。
悠真が外壁へ上がる。
白い息。
北を見る。
影。
見える。
遠い。
だが。
以前より大きい。
以前より近い。
そんな感覚があった。
白峰 蓮が記録紙を確認する。
「移動継続」
短く。
「反応上昇継続」
続ける。
誰も驚かない。
もう。
全員が知っている。
状況は良くない。
その時。
玲奈が目を閉じる。
少しだけ震える。
「……来る」
小さい声。
昨日と同じ。
だが。
今日は少し違う。
以前より近い。
その重さがあった。
下。
避難区画。
子どもたちが雪だるまを作っていた。
小さい。
歪な形。
でも。
皆楽しそうだった。
その光景を見て。
悠真は少しだけ息を吐いた。
守るものは。
まだここにあった。
(次話へ)




