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第282話「夜の灯り」
夜。
診療区画。
白い灯り。
静かな部屋。
ぴーちゃんが記録をまとめていた。
熱。
疲労。
睡眠不足。
侵食消耗。
数字は悪い。
でも。
崩れてはいない。
維持できている。
その事実が大きかった。
その時。
老人が入ってくる。
毛布を抱えている。
「眠れん」
短く。
ぴーちゃんが少し笑う。
「知ってる」
静かな声。
老人も少し笑う。
そして。
窓の外を見る。
風。
雪。
暗闇。
その向こう。
北。
影。
「近いな」
掠れた声。
ぴーちゃんは頷く。
否定しない。
もう。
否定できない。
その時。
遠く。
カァン。
鐘。
一回。
長い音。
二人とも外を見る。
影は来る。
侵食も来る。
でも。
守るべきものもある。
この灯り。
この人たち。
この生活。
それを残す。
それが今の役目だった。
風が吹く。
長い夜は続く。
だが。
灯りも消えてはいなかった。
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