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第279話「朝の報告」
朝。
蒼月残存区域。
風が吹いていた。
外壁布が揺れる。
配線が鳴る。
雪煙が流れる。
音がある朝。
それでも。
誰も安心していなかった。
昨夜。
玲奈が言った。
「見つけた」
その言葉が残っていた。
見張り兵たちは。
いつも以上に北を見ている。
補修班も。
配給班も。
皆どこか落ち着かない。
その時。
悠真が外壁へ上がる。
白い息。
北。
影。
まだいた。
遠い。
だが。
見える。
見えてしまう。
それだけで十分だった。
白峰 蓮が記録紙を読む。
「反応上昇継続」
短く。
「進行速度増加」
続ける。
誰も驚かない。
もう。
全員が理解している。
状況は悪化している。
その時。
玲奈が目を閉じる。
少し長い沈黙。
やがて。
小さく言う。
「……見てる」
短い声。
昨日より強い。
その言葉だけで。
外壁上の空気が重くなった。
その時。
下から子どもの笑い声が聞こえる。
小さい。
普通の声。
悠真は少しだけ振り返る。
その音が。
今の北海道を支えていた。
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