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第269話「北側観測」
午後。
外壁上。
観測班。
双眼鏡。
記録紙。
風。
白い息。
全員が北を見ていた。
今や。
見ない方が難しい。
そこに何かがいる。
それだけは確実だった。
その時。
雪面が揺れる。
長い。
広い。
昨日より。
さらに大きい。
まるで。
地下そのものが呼吸しているみたいだった。
見張り兵が呟く。
「近いな」
掠れた声。
誰も否定しない。
玲奈が目を閉じる。
長い沈黙。
そして。
「……近い」
小さい声。
今までで一番はっきりしていた。
悠真が北を見る。
何も見えない。
その時。
影。
遠い雪原。
立っている。
昨日と同じ場所ではない。
少し近い。
ほんの少し。
だが。
確実だった。
白峰 蓮が記録を握る。
「移動確認」
短く。
その言葉。
外壁上の全員が理解した。
待つ段階は終わった。
もう。
こちらへ向かっている。
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