第144話 「神城介入」
東京。
神城区域。
地下施設。
静かな部屋だった。
並ぶモニター。
北海道。
群馬。
各地の異常波形。
その全てが映っている。
「……増えてます」
一人が言う。
声は硬い。
無理もない。
波形が止まらない。
むしろ。
加速している。
その時。
神代 綾人が画面を見る。
無言で。
表情は変わらない。
だが。
空気だけが重い。
「……北海道は」
短く聞く。
即座に返答が来る。
「蒼月側が後退中」
「地域単位で侵食進行」
「現在封鎖ライン再構築中です」
淡々とした報告。
だが。
内容は重い。
その時。
別のモニターが開く。
群馬。
悠真たちの拠点。
防衛強化。
物資運搬。
避難民。
その映像を見ながら。
神代が小さく言う。
「……残したか」
誰にも聞こえないほど小さい声。
だが。
確かに。
“評価”が混じっていた。
その時。
別の男が言う。
「介入許可を」
空気が変わる。
介入。
つまり。
神城側が直接動く。
その意味。
重い。
数秒。
沈黙。
そして。
神代が言う。
「……限定的に許可」
その瞬間。
部屋の空気が変わる。
全員が動き始める。
「対象は」
誰かが聞く。
その時。
神代が答える。
「北海道」
「群馬」
「優先度は二つ」
短く。
その時。
さらに続ける。
「……未分類ではない」
全員が止まる。
その一言。
重い。
つまり。
新段階。
その時。
神代が画面を見ながら言う。
「侵食型が早すぎる」
「想定より進行が早い」
その言葉。
誰も反論しない。
現実だからだ。
その時。
別のモニターに一瞬だけノイズが走る。
ロシア。
雪原。
そして。
一人の男。
グラディオス。
その映像が映る。
数秒だけ。
だが。
部屋の空気が止まる。
「……また出ました」
誰かが言う。
緊張している。
無理もない。
神代だけが静かだった。
その時。
小さく言う。
「……放置しろ」
全員が止まる。
「よろしいのですか」
確認が入る。
その時。
神代が答える。
「今はまだ人間側だ」
短く。
だが。
続ける。
「……まだな」
その最後だけ。
少し重かった。
その時。
モニターの北海道側で。
また街の灯りが消える。
一つ。
また一つ。
静かに。
侵食されていく。
その光景を見ながら。
神代が言う。
「……間に合うか」
初めてだった。
不確定を口にしたのは。
その瞬間。
部屋の全員が理解する。
状況は。
かなり悪い。
その時。
通信が入る。
03だった。
『群馬側、防衛構築開始』
短い報告。
神代が聞く。
「使えるか」
数秒。
沈黙。
そして。
03が答える。
『……まだ未完成です』
その返答。
だが。
否定ではない。
神代が小さく頷く。
「ならいい」
短く。
その時。
神代が最後に言う。
「始めるぞ」
静かな声。
だが。
決定的だった。
観測は終わった。
ここからは。
国家単位の介入。
世界そのものが。
戦いに飲み込まれ始めていた。
(次話へ)




