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第140話 「北海道異変」

北海道。


蒼月区域。


そこは、もう普通の土地ではなかった。


雪が降っている。


だが。


寒くない。


空気がおかしい。


静かすぎる。


「……止まってる」


少女が小さく呟く。


蒼月 雪那。


蒼月側の観測担当。


年齢は若い。


だが。


目だけは異常に冷静だった。


その視線の先。


街がある。


いや。


街だったもの。


人がいない。


建物も壊れていない。


血もない。


戦闘の跡すらない。


なのに。


“空”。


「……また消えてる」


隣の男が言う。


声が掠れていた。


無理もない。


これで四度目だ。


街ごと、人が消えた。


痕跡なし。


死体なし。


音もなし。


ただ。


消える。


その時。


空間が揺れる。


一瞬だけ。


黒く。


「っ……!」


全員が止まる。


だが。


何も出ない。


歪みだけ。


残る。


「……未分類じゃない」


雪那が言う。


短く。


その言葉に空気が変わる。


未分類個体とは違う。


動きが違う。


気配が違う。


何より。


“消え方”が違う。


その時。


地面が揺れる。


小さく。


だが。


確実に。


「……地下?」


誰かが言う。


その瞬間。


雪那が叫ぶ。


「下がって!!」


全員が動く。


直後。


地面が裂ける。


音は小さい。


だが。


裂けた場所だけ。


“暗い”。


光が吸われている。


その中から。


何かが出る。


人型。


だが。


形が安定していない。


輪郭が崩れている。


そして。


“多い”。


一体じゃない。


十。


二十。


もっと。


「……なんだよこれ」


誰かが震えた声で言う。


その瞬間。


一体が動く。


速い。


次の瞬間には。


一人の兵士の前。


「っ――」


声が出る前に。


消えた。


兵士ごと。


血もない。


音もない。


ただ。


“存在だけが消えた”。


沈黙。


誰も理解できない。


その時。


雪那が言う。


「……撤退」


即断だった。


だが。


遅い。


一斉に動く。


黒い群れ。


位置が見えない。


距離感が狂う。


「撃て!!」


銃声が響く。


だが。


当たらない。


抜ける。


消える。


意味がない。


その時。


また一人消える。


叫びすら残らない。


「……なんで!」


誰かが叫ぶ。


答えはない。


その時。


雪那だけが気づく。


あれは。


殺していない。


“持っていっている”。


その理解。


背筋が凍る。


その瞬間。


通信が鳴る。


ノイズ混じり。


だが。


声は聞こえた。


『――こちら神城』


『状況を報告しろ』


神代側。


その声。


雪那が即座に答える。


「未分類個体ではありません」


「別種です」


短く。


その瞬間。


通信の向こうが静かになる。


そして。


小さく返ってくる。


『……始まったか』


その一言。


重かった。


雪那が聞き返す。


「何がですか」


だが。


返答はない。


通信が切れる。


その時。


遠くで。


また街の灯りが消える。


一つ。


また一つ。


北海道が。


少しずつ。


暗くなっていく。


雪那は理解した。


これは局地戦じゃない。


災害でもない。


もっと大きい。


“侵略”だ。


その時。


黒い群れの奥。


ほんの一瞬だけ。


巨大な影が見えた。


人型。


だが。


大きすぎる。


そして。


その目だけが。


こちらを見ていた。


「……っ」


言葉が出ない。


だが。


分かる。


あれは。


今までとは違う。


完全に。


別段階。


その瞬間。


黒い群れが一斉に動く。


雪那は振り返る。


「走って!!」


全員が雪の中を走る。


逃げる。


生き残るために。


その背後で。


北海道が静かに飲まれていく。


誰にも止められないまま。


(次話へ)


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