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第137話 「ロシアの男」

雪が降っていた。


視界を埋めるほどの白。


音が消える。


世界が静かすぎる。


その中で、一人の男が立っていた。


動かない。


ただ前を見ている。


その視線の先。


空間が歪んでいた。


黒じゃない。


透明でもない。


“揺れている”。


「……これか」


男が呟く。


低い声。


感情は薄い。


だが、理解している。


それが何か。


その時。


歪みが広がる。


一つ。


二つ。


三つ。


同時に現れる。


あの存在。


輪郭が揺れる。


位置がズレる。


普通の人間なら、見ただけで終わる。


だが。


男は動かない。


「……遅いな」


小さく言う。


その瞬間。


三体が動く。


同時に。


位置が変わる。


囲む。


距離ゼロ。


その時。


男が一歩踏み出す。


ただそれだけ。


なのに。


三体の位置が強制的にズレる。


「……雑だ」


短い評価。


そのまま手を上げる。


武器はない。


だが。


その瞬間。


空間が逆に歪む。


三体が中央へ引き寄せられる。


強制的に。


「……終わりだ」


男が言う。


その瞬間。


握る。


何もない空間を。


だが。


三体が同時に潰れる。


音もなく。


跡もなく。


完全に消える。


静寂。


雪だけが降り続ける。


その時。


男が小さく言う。


「……弱いな」


それは感想だった。


勝利でも。


達成感でもない。


ただの評価。


そのまま振り返る。


誰もいない。


だが。


男は言う。


「……見てるんだろ」


その瞬間。


空気が揺れる。


わずかに。


別の視線。


別の存在。


その時。


男が少しだけ笑う。


「……いい」


短く。


そのまま歩き出す。


雪の中へ。


消えていく。


その背中。


ただ一つ分かることがある。


あれは、人間の形をしているだけだ。


普通ではない。


その時。


遠くでまた歪みが生まれる。


今度は数が違う。


増えている。


だが。


男は止まらない。


ただ進む。


まるで。


それが当然であるかのように。


その名前を、まだ誰も知らない。


だが。


確実に。


世界の中心へ近づいている。


未来の魔王。


その存在だけが、静かに歩き始めていた。


(次話へ)


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