第136話 「見ている側(群馬外縁)」
群馬。
外縁。
俺たちは。
ただの警備だ。
戦う力はない。
中に入ることもできない。
だから。
外から見るだけ。
それが役割。
「……また来るぞ」
誰かが言う。
その瞬間。
空間が歪む。
一つ。
二つ。
三つ。
「……三体」
報告が上がる。
声が少し震えている。
無理もない。
あれは。
見てるだけで分かる。
“無理な相手”。
その時。
中の連中が動く。
拠点のやつら。
あいつらだけだ。
あれに向かっていけるのは。
「……やる気かよ」
思わず声が出る。
普通じゃない。
逃げるだろ。
あんなの。
だが。
違った。
あいつらは。
逃げない。
配置につく。
距離を取る。
囲むんじゃない。
“流してる”。
「……なんだあれ」
理解できない。
だが。
分かる。
戦い方が違う。
その時。
三体が動く。
同時に。
位置が変わる。
囲む。
普通なら終わりだ。
だが。
違う。
当たらない。
触れさせない。
全部。
ズレる。
「……止めてる……?」
誰かが言う。
信じられない。
だが。
現実だ。
その時。
三体が中央に集まる。
勝手に。
いや。
“集められてる”。
その瞬間。
一斉に動く。
あいつら。
同時に。
叩き込む。
三体が。
崩れる。
消える。
跡もなく。
静寂。
「……勝った?」
誰かが言う。
だが。
誰も答えない。
分からないからだ。
勝ったのか。
ただ。
消えただけなのか。
その時。
俺は気づいた。
地面。
少しだけ。
揺れている。
違う。
ズレている。
「……まだいるな」
思わず言う。
その時。
誰かが聞く。
「何が?」
答えられない。
見えない。
だが。
分かる。
終わってない。
その時。
中の連中が戻る。
普通の顔。
疲れてるだけ。
だが。
違う。
あいつら。
“慣れてる”。
あの戦いに。
その事実。
怖い。
その時。
誰かが小さく言う。
「……頼るしかねぇな」
その言葉。
全員が理解する。
俺たちは。
戦えない。
あの領域じゃ。
その時。
遠くで。
また歪みが揺れる。
小さく。
だが。
確実に。
「……増えてるな」
誰かが言う。
その通りだった。
終わってない。
むしろ。
広がってる。
その時。
俺は思った。
これは。
戦争じゃない。
もっと別の。
何かだ。
そして。
あいつらは。
その中で戦っている。
人間のまま。
その事実が。
一番怖かった。
見ている側は、何もできない。
それが。
この世界の現実だった。




