第108話 「動かされる領域」
外周。
壁が増えている。
直線じゃない。
曲げている。
流れを。
侵食体を。
「そこ、少し内側だ」
白峰 恒一の声。
細かい調整。
ほんの少しの角度。
それだけで。
流れが変わる。
「……こんなんで変わるのかよ」
蓮斗が言う。
半信半疑。
その時。
侵食体が動く。
壁に当たる。
流れる。
曲がる。
そして。
一定方向へ。
「……おお」
蓮斗が言う。
少し驚く。
「ほんとに流れてるな」
今までバラバラだったものが。
少しずつ。
“方向”を持ち始める。
「……いい」
悠真が言う。
確かな手応え。
その時。
「ぴー!」
ぴーちゃんが言う。
「こっち側、薄くなってる!」
確認する。
確かに。
侵食体の密度。
減っている。
分散されている。
その結果。
安全圏。
少しだけ。
広がる。
「……効いてるな」
白峰 蓮が言う。
冷静に。
「流れが偏っている」
その時。
奥。
重殻。
あの個体。
動く。
ゆっくりと。
一歩。
横へ。
「……来たな」
悠真が言う。
確信。
影響が出ている。
重殻の位置が。
変わる。
「……動いたぞ」
蓮斗が言う。
少し興奮する。
「マジで動かせるのか」
だが。
その時。
侵食体が変わる。
流れが乱れる。
今までの方向が。
崩れる。
「……っ!」
白峰 蓮が言う。
「対応してきた」
予想通り。
敵も。
ただ見ているだけじゃない。
流れを修正する。
「……簡単にはいかねぇか」
蓮斗が言う。
だが。
焦らない。
その時。
「いい」
白峰 恒一が言う。
短く。
「これでいい」
全員が見る。
「一回で動かす必要はない」
「少しずつでいい」
その言葉。
核心。
積み上げる。
それが。
この戦い。
その時。
悠真が一歩動く。
新しい位置。
壁を追加する。
流れがまた変わる。
少しだけ。
だが。
確実に。
その時。
重殻がまた動く。
ほんの少し。
だが。
前とは違う位置。
「……誘導できてるな」
白峰 蓮が言う。
確信に近づく。
その時。
ぴーちゃんが言う。
「……でも遅い」
小さく。
だが。
正確。
「このままだと……間に合わないかも」
その一言。
空気が少しだけ重くなる。
侵食。
止まっていない。
遅れているだけ。
「……時間勝負か」
悠真が言う。
小さく。
だが。
確信。
その時。
黒崎 恒一が言う。
「焦るな」
短く。
だが。
強い。
「崩れたら終わりだ」
その言葉。
全員が落ち着く。
速さより。
確実さ。
それが。
この戦い。
その時。
悠真が外を見る。
重殻。
あの個体。
確実に。
位置が変わっている。
ほんの少し。
だが。
確実に。
「……動いてるな」
小さく言う。
その事実。
大きい。
これは。
効いている。
その確信。
全員が共有する。
その時。
悠真が言う。
「……続けるぞ」
短く。
だが。
確実に。
罠は。
動き始めた。
そして。
少しずつ。
確実に。
重殻を。
“外へ”近づけている。
領域は、動かせる。
それは。
戦場を奪い返すための鍵だった。




