第105話 「分断される流れ」
外周。
壁は増えている。
一重じゃない。
二重。
三重。
細かく区切られている。
「そこ、隙間空けるな」
桐谷 恒一郎の声。
作業は速い。
無駄がない。
戦いじゃない。
だが。
“戦い以上に重要”。
「……これで本当に変わるのか?」
蓮斗が言う。
疑い。
だが。
期待もある。
「見るのが早い」
白峰 恒一が言う。
地面を見る。
侵食体。
ゆっくりと広がる。
だが。
壁に当たる。
止まる。
そして。
流れる。
別方向へ。
「……おお」
蓮斗が言う。
少し驚く。
「止まってはねぇけど」
「まとまらねぇな」
その通りだった。
今まで。
侵食体は。
一本の流れだった。
だが今は。
分かれている。
細かく。
バラバラに。
「……分断成功だな」
白峰 蓮が言う。
冷静に。
「これで制御が落ちる」
その時。
屍影が動く。
だが。
迷う。
進めない。
どこへ行くか。
判断できない。
「……いいぞこれ」
蓮斗が笑う。
「めちゃくちゃやりにくそうだな」
実際。
そうだった。
侵食体が分かれる。
結果。
屍影の動きも分かれる。
統制が乱れる。
その時。
「ぴー!」
ぴーちゃんが言う。
「回復安定してる!」
範囲。
維持できている。
むしろ。
前より楽。
「……いいな」
悠真が言う。
確かな手応え。
その時。
外。
奥。
重殻。
あの個体。
動く。
ゆっくりと。
前に出る。
そして。
侵食体が変わる。
分かれていた流れ。
再び。
まとまり始める。
「……来たな」
白峰 蓮が言う。
予想通り。
対応してきた。
「……さすがに甘くねぇか」
蓮斗が言う。
だが。
焦らない。
その時。
白峰 恒一が言う。
「いい」
短く。
「そこまででいい」
全員が見る。
「完全に止める必要はない」
「流れを遅らせればいい」
その言葉。
核心。
目的は。
完封じゃない。
“制御”。
その時。
黒崎 恒一が言う。
「止めるとは」
全員が見る。
「動けなくすることじゃない」
「思い通りに動かせなくすることだ」
その一言。
全員が理解する。
敵の自由を奪う。
それが。
止めるということ。
その時。
悠真が一歩前に出る。
境界ギリギリ。
そして。
踏み込む。
ほんの少し。
だが。
明らかに。
前。
石を置く。
新しい位置。
その瞬間。
侵食体が。
反応しきれない。
遅れる。
「……今だな」
悠真が言う。
確信。
条件。
一つ目。
満たし始めた。
その時。
ぴーちゃんが言う。
「……いける」
小さく。
だが。
はっきりと。
その一言。
全員が前を見る。
これは。
ただの防御じゃない。
“攻めの準備”。
その第一段階。
確実に。
進んでいる。
その時。
悠真が小さく言う。
「……次だな」
次の条件。
重殻。
あれを。
どうするか。
戦いは。
次の段階へ。
確実に。
進んでいる。
流れは、分断された。
それは。
戦場を取り戻すための一歩だった。




