7-end 禁書にさようなら
本日2本投稿です
7-7からご覧ください
「魂に誓って、宣言する」
そう口にしたカロの目の前には、バレーボールサイズほどのキラキラとした白い魔力の渦巻く塊が現れた。
カロは、それを両手で受け止める。
と、それに向かって、
「――――禁書を、この世界から消してくれ。もう誰も、悲劇に巻き込まれなくていいように」
と、今度こそ願いを口にするのだった。
すると、カロの手の中の白い光の塊はその場から弾けるように飛び出して、カロを囲っていた悪魔たちを縛りつけた。
「――――やられた……! アイたちを消そうとする奴なんて、1人もいなかったってのに……!!」
そう言って、アイポニーは顔を顰める。
しかし、その後で、
「ははははっ……!!」
と、漏れ出たような笑い声を響かせた。
「だけどさ、カロ! 禁書が消えても、僕ら悪魔は消えるないよ!! 今までだってそうだった!! 僕らの無尽蔵の魔力は、人々の欲望や絶望を食らって生まれてきたんだ!!」
すると、アイポニーに続いて、サンズも、
「むしろ、禁書という縛られる存在から解き放っていただき感謝申し上げる」
と、口にする。
そして、
「あたしたちは、人々の心に住み続けるわ。禁書なんて1つの場所にじゃない。この世界にいる、すべての人々の心に」
「そして、得も言えない衝動となって、真っ黒な欲望を刺激し続けるだろう。それこそが、私たちの生きる意味なのだからね」
「もう、2度と捕まえられないでしょう」
「貴殿が選択を間違えたことは明白だ」
「うむ! 俺たちの勝ちということだな!!」
と、サラ、ヴァ―テル、チャリオット、キュルソン、ヴァイオレットが、そう次々に行ったのだった。
しかし、その流れを、カロはたった1言でバッサリと切り捨てた。
「――――人間舐めんじゃねえぞ」
それは、強くそして揺るがない意志が込められていた。
「お前らは、負けたんだよ。たった1人の、ちっぽけな人間すら説得できずにな」
カロはそう言って自分のことを親指でトンと指し示す。
と、カロは、
「いつだってかかってきやがれ! その時は、俺をここに導いたみたいに、人の心がまたお前らを殺す。それだけだ」
と、放ち、その最後に、
「そうやって永遠に負け続けるんだな! 敗北者どもが!!」
と、言ってみせるのだった。
「なんだと……!?」
その言葉を聞くと、悪魔たちがカロを睨む一方で、封者たちは笑い出す。
そして、ウェズーリが代表して、
「つくづく、あなたには驚かされますね。カロ」
と、言った。
「そう。人は意思を持ち、誰かと繋がり、やがて何かを成し遂げる。大きなことも、些細なことも。――――きっと、それに気づけない人間もいるでしょう。大きなことばかりに目をやって、自分の足元の小さなことにも気づけない。そんな人も。――――けれど、どんな人間もやがて知るのです。人は、1人では何も出来ない人間だと。自分には限界があると。そして、それを認めるか、それでももがくかを選ぶ。――――そこで、もしもがくことを選んだとしても、それは欲望のせいじゃない。人々に宿った、強い強い意志の力によるものなのです。理性のない怪物と化すのではなく、自分と対話し選んだ人の意志なのです。どんな途方のない夢だとしても、胸を張れって歩んでいける道なのです。そして、その道はやがて孤独から人を救い、大きな意志となる」
「だから、アイたちは意味がないって!? だったら、孤独にずっと落とし続けてやるさ! 人を恨んで、恨むことでしか憎めないようにね!!」
「やってみせなさい。私たちがいて、それができるというのなら」
「私たちが、いて……?」
アイポニーがそう尋ねると、封者たちは勇ましい顔つきになって悪魔たちと対峙する。
そして、
「あなたたちが解放されるなら、私たちだってこの禁書から解放されるのです。――――たとえ、人間1人1人が悪魔を宿すことになったとしても、その時は私たちが封者が気高い理性として人々に宿り、支える。――――あなたたちに、好き勝手はさせません」
と、堂々宣言するのだった。
「……っ!」
アイポニーの顔に青筋が浮かぶと――――その時、カロの体が透けて白い光へと変わり始めた。
「カロ――――いえ、骨喰加那太。元の世界へ戻る時です。ここから先は、私たちに任せなさい。あなたは、仲間たちと日常へ帰るのです。あなたの望んだ、未来へと進むために」
ウェズーリはその姿を見ると、にっこりと微笑む。と、その笑顔を最後に、カロの視界は真っ白に染まるのだった。
▼ ▼ ▼ ▼
「はっ……!!」
目覚めると、カロは遺跡の台座の並ぶ円状の部屋。
その中心にいた。
しかし、もう足元に紋章はなく――――さらに、カロのぼやけたまま頭が思考を取り戻すのを待たずに、台座は禁書とともに順々に割れ始めるのだった。
「――――な、ななな、なんだ!?」
すると、今度は遺跡全体が振動を始める。
と、ヒビはカロの立っている地点を中心にして、壁にも天井にも広がり始めた。
「ま、まさか……!?」
カロは、嫌な予感がしてその部屋を飛び出す。
と、部屋の外の通路にもそのヒビは広がっていて、さらに円状の部屋の壁からはピシッという音とともに海水が吹き出し始めるのだった。
「――――崩落するって、言っとけよぉおおおおおおおおッ!?」
その光景を見たカロは、通路を全力で走り出す。と、そこで問題があった。
「ど、どこから来たっけ!?」
分岐だらけの通路。
カロは、その正解が分からなかった。
「ええい! ままよ!!」
カロはその場で足踏みをして少し考えるもいくら考えても答えが出ないとなると、自分の直感を信じて通路に飛び込んだ。――――と、その時だった。
「骨喰特等!? 良かった! 無事だったんですね!!」
そこにいたのは、自分を迎えに来ていた飛鳥と良月だった。
「おお! 2人とも!! 良かった! 俺、通路が分からなくて――――」
「――――話は後ですわ! ついてきてくださいまし!!」
安堵するカロに、そう促す飛鳥。
すると、3人は飛鳥の先導によって遺跡をなんとか出ることができたのだった。
▼ ▼ ▼ ▼
「な、何が起きてやがんだ……!? 何をしやがった、カロ!!」
遺跡の外。
アザミが揺れる地面に体制を崩し、片膝をつく。
と、それはシズクや文壱だけでなく“デュラハン”たちも同じようで、皆がこの異常現象に対応できないでいた。
「うおっ!? 外の方が揺れがひどくねえか!?」
すると、その時、よろけながらカロたちが遺跡の入り口から現れる。
そして、シズクが、
「――――カロ!」
と、その名前を呼んだ。
「――――シズク!! みんなも!!」
カロはそれに気がついて、
「もうすぐ、この遺跡は崩壊する! 逃げるぞ!!」
と、叫ぶ。
しかし、それにアザミは、
「逃げるってどこへ!!」
と、尋ねた。
確かに、それはもっともだった。
この海の中をどこへ行こうというのか。
「ともかく上だ! この海の上!!」
カロは具体的な案を持たぬまま、そう答える。すると、それを聞いていた文壱が、
「――――おい! “デュラハン”ども!! 僕たちを助けろ!!」
と、言った。
何を言ってるんだ、そう言いたげに文壱を睨む、“デュラハン”たち。
しかし、文壱がそこで、
「エレミヤは――――お前たちのボスは、まだ生きてる……!! だが、腹を貫かれたままならそう長くないうちに死んでしまうだろう。――――けれど、もし僕らを助けてくれるなら僕らがエレミヤの治療を保証する。特魔が持てる限りの医療技術と魔術を以て、エレミヤを助けると約束する!」
と、続けると、“デュラハン”たちは戸惑いを見せるのだった。
そして、その最後に、
「――――お前たちの目的は、生き残ったものが幸せになることなんだろう? だったら、ここでそいつを死なせちゃだめだ」
と、真っ直ぐな目で文壱が“デュラハン”たちを見つめると、しんとした後で“デュラハン”の中から1体が徐に動き出した。
その個体は、海と遺跡とを区切る海水のカーテンの前で自身の背中を乗れと言わんばかりに指し示す。
と、それに続いて、他の“デュラハン”たちも海水のカーテンの前に立つのだった。
「行きましょう」
その姿を見て、文壱が“禁特”に脱出を促す。と、カロはその前にエレミヤを抱える“デュラハン”に近づき、
「警戒しなくて大丈夫だ。脱出に耐えられるよう傷口を保護する」
と、もう白くはなくなった《魔蜘蛛の糸》で簡単にエレミヤの傷口を縫い合わせた後で、さらに海水が染み込んでしまわないよう包帯のように傷口をぐるぐる巻きにした。
それから、一行は大きく息を吸って“デュラハン”の背に捕まる。
と、“デュラハン”たちは互いに顔を見合わせて頷き、海の中へと飛び込むのだった。
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